高齢になったときにインプラントで生じるトラブルや予防法を解説

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「高齢になったときにインプラントを使い続けられるかどうかを知りたい」
「インプラントのメンテナンスや通院が高齢になっても可能か確認したい」
「高齢になって体調が変化した際にインプラントがどのような影響を受けるか知りたい」
インプラントをした方や、これからインプラントをする方のなかには上記のような考えをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
高齢になったときにインプラントで生じるリスクとして、自力でのセルフケアが困難になる、通院できず異常の発見が遅れる、全身疾患の発症や薬の服用が悪影響を与えるなどが挙げられます。
この記事では、「高齢になったときにインプラントで生じるトラブルや予防法」について深掘りして解説していきます。
高齢になってからインプラントにかかる追加費用まで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

目次

高齢になったときにインプラントによって生じるトラブル・リスク

高齢になったときにインプラントによって生じるトラブル・リスクは、以下の6つです。

  • 身体・認知能力の低下でセルフケアが困難になる
  • メンテナンスに通院できず異常の発見が遅れる
  • インプラント周囲炎を発症し歯茎や骨が痩せる
  • 全身疾患の発症や薬の服用がインプラントに影響する
  • 噛み合わせの変化や部品の劣化・破損が生じる
  • 再治療や修理が必要なときに経済的負担がかかる

1つずつ解説します。

身体・認知能力の低下でセルフケアが困難になる

年齢を重ねて視力や手の細かな動きが衰えると、インプラント周囲の清掃が不十分になりやすいです。毎日の丁寧な歯磨きができなくなると、汚れが蓄積してインプラント周囲炎の原因になります。
また、認知症で歯磨き自体を忘れたり、歯磨きを拒んだりするケースもあるため、高齢になったときインプラントを長期的な維持するには、セルフケアの壁をどう乗り越えるかが課題となります。

メンテナンスに通院できず異常の発見が遅れる

要介護状態になったり、1人での外出が困難になったりして、歯科医院への定期的なメンテナンスに通えなくなるのも、高齢になったときにインプラントによって生じるリスクです。
プロによるチェックやクリーニングが途絶えると、インプラント周囲炎の発見が遅れる場合があります。気づいたときには手遅れになっているケースも少なくありません。

インプラント周囲炎を発症し歯茎や骨が痩せる

インプラント周囲炎は、インプラントの歯周病とも呼ばれる、インプラントで生じるリスクの1つです。セルフケア不足が原因で発症し、インプラントを支える歯茎や顎の骨を溶かします。
インプラント周囲炎は、自覚症状がないまま進行し、最悪の場合インプラントがグラグラになって抜け落ちるおそれもある病気です。

全身疾患の発症や薬の服用がインプラントに影響する

高齢になると、糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などの全身疾患が発症しやすくなったり、心臓病や関節炎などで薬を服用していていたりする方が多くなります。これらの疾患や薬の影響で、インプラント体と骨との結合が遅れたり、治療後の感染リスクが高まったりすることがあるのです。
そのため、高齢者がインプラント治療を受ける場合は、持病や服薬状況を十分に確認し、医師と相談して計画を立てることが重要です。

コラム

インプラント治療は糖尿病でもできる?治療をおこなうリスクを解説

「インプラントは糖尿病でもできる?」「糖尿病がインプラント治療におよぼすリスクは?」と思っていませんか?
インプラント治療は、糖尿病の方でも医師と共にしっかり管理されている場合は可能です。しかし、口腔内や身体の健康状態によって治療を断られる場合もあります。[…]

噛み合わせの変化や部品の劣化・破損が生じる

年齢を重ねるにつれて、残っているご自身の歯がすり減ったり位置が変わったりして、全体の噛み合わせが変化する場合があります。
噛み合わせの変化がインプラントに過度な負担をかけ、被せ物が欠けたり、内部のネジが緩んだりする原因になります。
噛み合わせの変化による部品の劣化・破損を防ぐためにも、定期的な噛み合わせのチェックと調整が必要です。

再治療や修理が必要なときに経済的負担がかかる

高齢になったとき、インプラント周囲炎の治療や、破損した被せ物の修理・交換には追加の費用が発生するリスクがあります。年金生活で収入が限られる高齢期において、予期せぬ出費は経済的負担が大きいでしょう。
高齢になったときの万が一に備えて、治療後の費用をあらかじめ把握しておく必要があります。

高齢になってからもインプラントを使用するメリット

高齢になったときにインプラントでいるメリットは、以下の5つです。

  • 自分の歯のようにしっかり噛めて食事が楽しめる
  • 入れ歯の着脱や手入れの煩わしさから解放される
  • 若々しい見た目を保ち会話も楽しめる
  • 誤嚥性肺炎や認知症の予防につながり健康寿命を延ばせる
  • 周囲の健康な歯への負担がなく歯を失うリスクを減らせる

それぞれ解説します。

自分の歯のようにしっかり噛めて食事が楽しめる

高齢になっても、ご自身の歯とほぼ同じ力でしっかり噛めるのがインプラントのメリットです。
入れ歯や差し歯であれば硬いものや弾力のあるものを避ける必要があります。ですが、インプラントは顎の骨に直接固定されるため強度が高く、何でも美味しく食べられるため、食事の楽しみが広がります。
インプラントでしっかり噛めるようになると、低栄養を防ぎ、豊かな食生活を通じて日々の活力と満足感を維持できます。

入れ歯の着脱や手入れの煩わしさから解放される

インプラントは固定式のため、入れ歯のように毎日取り外して洗浄したり、粘着剤を使ったりする必要がありません。将来的に身体が不自由になった場合も、ご家族や介護者の負担を軽減できるのはインプラントのメリットです。
ご自身の歯と同じように歯磨きができる手軽さが、長期的な快適さにつながります。

若々しい見た目を保ち会話も楽しめる

しっかりと骨に固定されたインプラントは、顎の骨が痩せるのを防ぎ、口元のシワや顔の輪郭の変化を抑え、若々しい見た目を保てます。
またインプラントは、入れ歯のようにズレたり外れたりする心配がないため、人前での会話やおしゃべりを気兼ねなく楽しめるのもメリットです。

誤嚥性肺炎や認知症の予防につながり健康寿命を延ばせる

しっかり噛む行為は、脳に刺激を与えて認知症のリスクを低減させるだけでなく、食べ物を細かくできることから誤嚥性肺炎の予防にも効果的です。
インプラントによって噛む機能が維持されるのは、お口の健康だけでなく、健康寿命を延ばすうえでも重要です。

周囲の健康な歯への負担がなく歯を失うリスクを減らせる

ブリッジのように隣の健康な歯を削ったり、部分入れ歯のようにバネをかけたりする必要がないのもインプラントのメリットです。インプラントは、周囲の歯に負担をかけずに独立しているため、残っているご自身の歯の寿命を守れます。
インプラントで1本でも多くの歯を長く保つのは、高齢期のお口全体の健康維持には欠かせません。

高齢になってからインプラントにかかる追加費用

前述したように、高齢になってからインプラントにかかる追加費用を把握しておくことは、治療の選択をするうえで重要な要素となります。
高齢になってからのインプラントにかかる追加費用は、以下の5つです。

  • 定期メンテナンスやクリーニングの費用
  • 被せ物(上部構造)の修理・交換費用
  • インプラント周囲炎の治療にかかる費用
  • 通院困難になった場合の訪問歯科の費用
  • インプラント本体の撤去や再治療が必要になった場合の費用

1つずつ解説します。

定期メンテナンスやクリーニングの費用

インプラントを長持ちさせるには、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要であり、定期メンテナンスには費用がかかります。メンテナンスは通常、約3カ月〜半年に1回程度の頻度でおこない、1回あたり5千円〜1万円程度が費用の目安です。
定期メンテナンスは、専門的なクリーニングや噛み合わせのチェックなどが含まれる自費診療となります。

被せ物(上部構造)の修理・交換費用

インプラント本体は長持ちしますが、上に取り付けた被せ物(上部構造)は、経年劣化で破損したり摩耗したりする場合があります。被せ物の修理や交換が必要になった際の費用は、1本あたり10万〜20万円程度かかります。
とくに噛む力の強い奥歯や、硬いものをよく食べる習慣がある方は、将来的に交換が必要になる可能性を考慮しておきましょう。

インプラント周囲炎の治療にかかる費用

インプラントの歯周病であるインプラント周囲炎を発症した場合、別途費用による治療が必要です。症状が軽度の場合は数万円程度で済む場合もありますが、進行して外科的な処置が必要になると、数十万円単位の費用がかかるケースも。
日々のセルフケアと定期メンテナンスが、結果的に将来の費用を抑えるのを心得ておきましょう。

通院困難になった場合の訪問歯科の費用

ご自身で歯科医院への通院が困難になった場合、ご自宅や施設でケアを受けるための訪問歯科診療にも費用がかかります。訪問歯科診療には、通常の通院に比べて、交通費や出張費などが上乗せされるのが一般的です。
介護が必要になった場合でもインプラントのケアを継続できるよう、訪問歯科診療の存在と、それにともなう費用負担も視野に入れておきましょう。

インプラント本体の撤去や再治療が必要になった場合の費用

重度のインプラント周囲炎やインプラントの破損で、本体そのものを撤去する必要が出た場合、高額な費用がかかります。インプラントの撤去は難易度の高い外科手術であり、数十万円の費用が必要です。
その後、再度インプラントや入れ歯などの治療をおこなう費用も別途発生します。

高齢になったときにインプラントを維持するための予防法

高齢になったときにインプラントを維持するための予防法は、以下の5つです。

  • 毎日の丁寧なセルフケアを継続する
  • 定期的なプロフェッショナルケア(メンテナンス)を欠かさない
  • 介護が必要になった場合のケア体制を家族と相談しておく
  • 訪問診療を活用する
  • 上部構造を見直す
  • 全身の健康状態を良好に保つ
  • 異常を感じたらすぐに歯科医師に相談する

それぞれ解説します。

毎日の丁寧なセルフケアを継続する

インプラントを維持する基本は、毎日の丁寧な歯磨きです。インプラントと歯茎の境目は汚れが溜まりやすいため、歯間ブラシやタフトブラシを活用した清掃が効果的です。
手が不自由になった場合でも、電動歯ブラシや持ちやすい歯ブラシを使うなど、セルフケアを継続する工夫をしましょう。

コラム

【インプラント治療後の歯磨き】注意点や歯磨き粉の選び方を徹底解説

「インプラント治療後の歯磨きは通常の歯磨きと異なるの?どうやってやるのがいい?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
インプラント治療後の歯磨きは、インプラントの持続と健康な口腔を保つために極めて重要です。そこでこの記事では、以下の内容を中心に解説しています。[…]

定期的なプロフェッショナルケア(メンテナンス)を欠かさない

ご自宅でのセルフケアだけでは除去できない汚れを取り除き、異常を早期に発見するために、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。
約3カ月〜半年に1回は専門家によるクリーニングや、ネジの緩み・噛み合わせのチェックを受けるのが、インプラント周囲炎をはじめとするトラブルを防ぐのに有効な予防法です。
通院が可能な方は、定期メンテナンスをおこない、インプラントを長持ちさせましょう。

介護が必要になった場合のケア体制を家族と相談しておく

将来、ご自身での通院や歯磨きが困難になる可能性を見据え、介護が必要になった場合のケア体制を事前に家族と話し合っておくのも、インプラントを長期的に維持するうえで重要です。
ご家族や介護士の方とインプラントの清掃方法を共有したり、訪問歯科診療の情報を集めておいたりするなど、早めに準備しておくのが将来の安心につながります。

訪問診療を活用する

ご自身での通院が難しくなった場合は、歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設へ来てくれる訪問歯科診療を活用するのが有効な手段です。専門家によるプロのクリーニングや噛み合わせのチェックを定期的に受けられるため、通院できなくてもインプラント周囲炎を予防できます。
将来に備え、付近の歯科医院で訪問歯科診療といったサービスがあるかを把握しておきましょう。

上部構造を見直す

将来、ご自身での清掃が困難になるのを見据え、あらかじめインプラントの被せ物(上部構造)を清掃しやすいシンプルな形に見直すのも予防法の1つです。たとえば、複雑な形の被せ物から、より磨きやすい一体型の構造に変更するといった対策が考えられます。
介護者の負担を減らし、清潔な状態を保ちやすくするために、元気なうちから歯科医師と相談しておきましょう。

全身の健康状態を良好に保つ

インプラント周囲炎はもちろん、糖尿病や骨粗しょう症などの全身疾患はインプラントの安定性に影響をおよぼすため、全身の健康管理もインプラントを維持するうえで重要です。かかりつけ医と連携し、持病を良好な状態にコントロールするのが、インプラント周囲の骨や歯茎の健康を保ち、インプラントの維持につながります。
お口の健康は体全体の健康と密接に関わっている点を、しっかり押さえておきましょう。

異常を感じたらすぐに歯科医師に相談する

「インプラントが少しぐらつく」「歯茎から出血がある」といった些細な異常でも、自己判断で放置せず、すぐに歯科医師に相談するのが大切です。インプラント周囲炎は自覚症状なく進行する場合があるため、小さな変化がトラブルのサインである可能性があります。
早期発見・早期治療が、インプラントを維持するのに効果的な方法です。

まとめ

インプラントは、高齢になったときの生活の質を向上させるメリットがある一方、将来の健康状態の変化にともなうリスクも存在します。重要なのは、治療のメリットと長期的なリスクの両方を正しく理解し、ご自身の将来を見据えて判断することです。
インプラントを長期的に維持するには、セルフケアの継続や定期メンテナンスが大切です。まずは信頼できる歯科医師に相談し、高齢になったときの対応や必要な事前準備をおこないましょう。
当院は、矯正に関するご相談は無料で実施しており、永久歯が生えそろった後の方や、お子さまの歯並びが気になっている方、矯正治療を行ったが満足できなかった方、セカンドオピニオンの方など多くの方にご利用いただいております。インプラントを検討している方や、既にインプラントをおこなった方でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

本院院長 奥田 健太郎

略歴

2002年 日本歯科大学卒業
2002年 歯科医師免許取得
2003年 医療法人京和会梅田歯科 勤務
2005年 医療法人武内歯科医院 勤務
2009年 おくだデンタルクリニック開院 院長就任
2010年 九州大学大学院 博士号(歯学博士) 取得
2010年 九州大学大学院 歯学府 卒業
2011年 医療法人社団 健光会 設立
現在に至る

所属学会

アメリカインプラント学会
日本口腔インプラント学会
国際口腔インプラント学会
AAIDアメリカインプラント口腔学会
日本顎咬合学会