2025/06/23

「インプラントは糖尿病でもできる?」「糖尿病がインプラント治療におよぼすリスクは?」と思っていませんか?
インプラント治療は、糖尿病の方でも医師と共にしっかり管理されている場合は可能です。しかし、口腔内や身体の健康状態によって治療を断られる場合もあります。
この記事では、「インプラント治療は糖尿病でもできるのかについて、治療をおこなうリスク」を紹介します。インプラント治療前に糖尿病における血糖値をコントロールする方法まで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病とはどのような病気か

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が多すぎる状態が続いてしまう病気です。
本来であれば、膵臓から出るインスリンというホルモンが、糖を細胞へ運んでエネルギーに変えてくれます。しかし、インスリンの量が足りなかったり働きが悪かったりすると糖が血液の中に溢れてしまいます。高血糖の状態を放置し続けると、全身の細い血管がボロボロになり、目や足、腎臓などに深刻なダメージをおよぼすのが特徴です。
インプラント治療においても、高血糖による血管へのダメージが傷の治りに大きく関わってきます。
糖尿病の種類
糖尿病には、主に以下の3種類があります。
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- 妊娠糖尿病
ひとつずつ解説します。
1型糖尿病
1型糖尿病は、自己免疫の異常により膵臓がほとんどインスリンを生産できなくなるタイプです。主に子どもや若年層に多く発症しますが、成人でも発症するケースがあります。
インスリン注射による管理が必要で、日々の血糖コントロールが重要です。治療計画は、歯科医師と相談し、継続的に管理していくことが求められます。
2型糖尿病
2型糖尿病とは、主にインスリンの分泌不足やインスリンの効き目(インスリン抵抗性)が低下することで、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。成人に多く見られ、生活習慣や遺伝的要因が発症に深く関わっています。
生活習慣の影響があるため、食事療法や運動療法を組み合わせた治療が欠かせません。状態によっては薬物療法を併用し、合併症予防を目標に治療が必要です。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常のことを指します。妊娠中のホルモン変化によりインスリンの働きが悪くなり、一時的に血糖値が高くなる状態です。
多くの場合は出産後に正常化しますが、将来的に糖尿病を発症するリスクが高まるケースもあります。産婦人科医の指示に従い、適切な管理をおこなうことが重要です。
糖尿病の症状
糖尿病の代表的な症状は、のどの渇きや頻尿、だるさ、急激な体重の減少などです。
血液中の糖分が高くなると、体はそれを薄めようとして水分を欲するため、水をたくさん飲むようになります。また、糖を外に出そうとすると尿の量が増え、体内のエネルギーが不足して疲れやすさを感じるようになるのです。
これらのサインを見逃して放置すると、インプラントの手術にも悪影響が出るため、体調の変化に敏感になるのが重要です。早期発見と適切な血糖値コントロールが、お口の健康を守ることにもつながります。
糖尿病によって現れる口内の変化
糖尿病が悪化すると、口内に以下のような変化が見られます。
- 歯周病が重症化しやすくなる
- 唾液の分泌量が減少する
- 傷が治りにくくなる
それぞれ解説します。
歯周病が重症化しやすくなる
糖尿病の方は、歯周病が非常に重症化しやすく、治りにくい傾向にあります。高血糖によって血管がダメージを受け、細菌と戦う白血球の働きが弱まってしまうためです。
歯周病は「糖尿病の第6の合併症」とも呼ばれており、お互いに悪影響をあたえ合う密接な関係にあります。重度の歯周病を放置したままインプラント手術をおこなうと、周囲の骨が溶けて脱落してしまうリスクが高まります。
そのため、手術前には徹底的な歯周病治療をおこない、清潔な環境を整えるのが絶対条件です。
唾液の分泌量が減少する
糖尿病が進むとお口の中を潤す唾液の出る量が減り、ドライマウスになりやすいです。
血糖値が高いと尿の量が増えて体全体が水分不足になり、唾液を作る力も低下します。唾液にはお口の中の汚れを洗い流したり細菌の増殖を抑えたりする大切な役割があるため、分泌が減るとお口のトラブルが急増するのです。
インプラントは人工物ですが、その周りの粘膜は唾液の保護を必要としています。お口の乾燥が続くとインプラント周囲炎のリスクが高まるため、こまめな水分補給が欠かせません。
傷が治りにくくなる
糖尿病の状態では、手術後の傷口が塞がるまでに時間がかかり、感染症を起こす危険が高まります。高血糖により血流が悪くなると、酸素や栄養が細胞に届きにくくなり、組織を修復する力が弱まってしまうのが原因です。
インプラント治療は顎の骨に器具を埋め込む外科手術を伴うため、傷の治りが遅いと、骨とインプラントがうまく結合しない場合があります。安全に治療を完了させるためには、術前から血糖値を目標の数値まで下げておき、細菌に負けない体を作っておくことが最も大切な対策となります。
糖尿病の方でもインプラント治療を受けることは可能
糖尿病の方でも、お体の状態を適切にコントロールできていれば、インプラント治療を受けるのは可能です。歯科医院と内科の主治医が密に連携することで、インプラント治療の成功率はぐんと高まります。
大切なことは、血液中の糖分が多い状態を改善し、細菌に負けない体を作っておくことです。健康な方と同じように噛む喜びを取り戻すために、まずは今の自分の状態を知る一歩を踏み出しましょう。
治療を受けるための絶対条件
糖尿病の方でもインプラント治療を受けることは可能ですが、全員が当てはまるわけではありません。血糖値コントロールが一定水準で安定し、感染源(歯周病など)を減らせること が必須条件です。
高血糖が続くと免疫反応や創傷治癒が弱まり、術後感染や治りにくさにつながりやすいとされています。そのため、術前に全身状態の確認、服薬状況の把握、歯周病治療とセルフケアの徹底、定期メンテナンスへの通院が欠かせません。
喫煙がある場合はインプラント手術の成功率を下げやすいため、禁煙指導も重要です。
インプラント治療における血糖コントロールの目安(HbA1c値)
一般的にインプラント治療を安全に実施するにはHbA1cを7.0%以下に保つことが目安とされています。
7.5%を超えると合併症や治療失敗のリスクが増す可能性があるため、6.5%以下にコントロールすることが望ましいと考えられています。
血糖管理が不十分な場合は、治療の延期も検討されるため注意が必要です。
重度の場合は治療ができないケースもある
糖尿病が重度で血糖が不安定な状態では、インプラント治療が延期や中止になる場合があります。高血糖が続く状態では、術後感染や治癒遅延の懸念が高まり、インプラント周囲炎の発症リスクも上がりやすいためです。
さらに、腎機能障害や心血管疾患など合併症が重なると外科処置自体の安全性が下がるため、まず内科での治療を優先する判断になります。治療を急がず、血糖が落ち着いてから再評価する流れが安全です。
糖尿病の方がインプラント治療をおこなうリスク

糖尿病の方がインプラント治療をおこなうリスクは、以下の4つです。
- インプラントと骨が結合しにくい
- 傷の治りが遅く、術後感染を起こしやすい
- インプラント周囲炎を発症・進行しやすい
- 全身状態の変動が治療経過に影響する
- 低血糖になる可能性がある
- 服用している薬の影響を受ける可能性がある
それぞれ解説します。
インプラントと骨が結合しにくい
糖尿病の状態では、通常よりもインプラントと骨が結合しにくいです。高血糖によって骨を作る細胞の働きが弱まってしまうためです。
インプラント治療は、チタン製のネジが顎の骨としっかりとくっつくことが成功の鍵となります。しかし、血液中の糖分が多い状態だと、骨の代謝に必要な栄養や酸素が十分に届きません。その結果、通常よりも結合するまでに長い時間がかかったり、最悪の場合は結合せずに抜け落ちてしまったりします。
傷の治りが遅く、術後感染を起こしやすい
糖尿病特有の血流障害により、手術後の傷の治りが健常な方よりも遅くなる傾向があります。血液は傷を治すための酸素や栄養を運ぶ重要な役割を担っていますが、高血糖はその血流を悪化させるためです。
さらに、細菌と戦う白血球の機能も低下するため、傷口から入った細菌に対して抵抗できず、術後感染を起こしやすいです。傷口がなかなか塞がらないと細菌が入る隙を長く与えてしまうため、術後は処方された抗生物質を確実に服用し、徹底した衛生管理をおこなう必要があります。
インプラント周囲炎を発症・進行しやすい
糖尿病の方は、インプラントを支える骨や歯茎が細菌に侵される「インプラント周囲炎」になるリスクが非常に高いです。これは天然の歯でいう歯周病と同じような病気ですが、進行スピードが非常に速いのが特徴です。
インプラントには天然歯のような防御機能がないため、一度炎症が起きると、あっという間に骨が溶かされてしまいます。自覚症状が少ないまま進行するため、気づいたときにはインプラントがグラグラになっているケースも少なくありません。
日頃の丁寧なケアと、こまめな検診が何よりも重要です。
全身状態の変動が治療経過に影響する
手術に伴う精神的なストレスや緊張が、血糖値や血圧を急激に変動させ、治療の経過に悪影響をおよぼす可能性があります。
人間は強いストレスを感じるとアドレナリンなどのホルモンが分泌され、血糖値が上がりやすくなる体の仕組みを持っています。また、手術後に痛みが続く、と食事が十分に摂れなかったり、睡眠不足になったりして体調を崩す原因にもなるのです。
全身の状態が不安定になると、お口の治癒力も低下してしまうため、リラックスして治療を受けられるよう、歯科医師とよく相談して不安を取り除くことが大切です。
低血糖になる可能性がある
手術中や術後に血糖管理が不十分だと、めまいや発汗、意識障害をともなう低血糖発作が起こる場合があります。発作時には、個人の意識レベルや症状に応じて適切に対処し、必要に応じて速やかに医療機関に連絡をおこなうことが重要です。
治療前に血糖コントロール計画を綿密に立て、安全確保に努めるのが重要です。
服用している薬の影響を受ける可能性がある
糖尿病の治療薬以外にも、合併症の予防などで飲んでいるお薬がインプラント手術に影響をあたえる場合があります。
たとえば、骨粗しょう症の治療薬を服用している方は、手術後に顎の骨が壊死してしまう副作用のリスクが指摘されています。また、脳梗塞や心筋梗塞の予防で「血液をサラサラにする薬」を飲んでいる場合、手術中の血が止まりにくくなるため大変危険です。
安全な手術をおこなうためには、お薬手帳を必ず提示し、休薬の必要性について内科と歯科の医師同士で相談してもらうのが鉄則です。
糖尿病の方がインプラント治療を受けるためには?
糖尿病の方がインプラント治療を受けるためには、以下の対応が求められます。
- 内科主治医と連携して術前検査で全身状態を把握する
- 口腔内の環境を整える
- 禁煙を徹底しインプラントの定着率を高める
- 術後も低血糖・高血糖を防ぐ
- 血糖値をコントロールする
詳しく解説します。
内科主治医と連携して術前検査で全身状態を把握する
血糖値だけでなく、腎機能や心機能の検査も実施し、全身状態を総合的に評価しましょう。その結果に基づき安全な治療計画を立て、内科医とも情報共有をおこないます。
インプラント治療は、万全の体制で手術に臨むことが重要です。
口腔内の環境を整える
歯周病や虫歯の治療を完了させ、口腔内を衛生的に保つことが不可欠です。歯周ポケットの深さを4mm以下に管理し、出血や炎症を抑えることで感染リスクの軽減につながります。
日常的な口腔ケアの徹底と、定期的な歯科メンテナンスがインプラント治療の成功のカギです。
コラム

2023/12/13
禁煙を徹底しインプラントの定着率を高める
インプラント治療を検討されているのであれば、この機会に禁煙を徹底しましょう。
タバコを吸うと、お口の中の血管が縮んで血流が悪くなり、糖尿病による治癒力の低下をさらに悪化させます。実際に、喫煙者は非喫煙者に比べてインプラントが骨とくっつかずに脱落してしまう確率が格段に高いというデータもあります。
せっかくの治療を無駄にしないためにも、手術の前後だけでもタバコを断つ勇気を持つことが大切です。
術後も低血糖・高血糖を防ぐ
インプラントの手術終了後も、血糖値が急激に上がったり下がったりしないよう注意深く管理を続けましょう。
術後の痛みでお粥やゼリーなど柔らかいものばかり食べていると、栄養バランスが偏り、血糖値が不安定になりやすいです。また、定期的な検診を欠かさず受け、インプラント周囲炎の兆候がないかをチェックしてもらう必要があります。
インプラント治療後も、内科と歯科両方への通院を続け、健康を維持していきましょう。
血糖値をコントロールする
インプラントを骨としっかり結合させるためには、食事や薬で血糖値を理想的な範囲にコントロールするのが最も大切です。一般的にはHbA1cの値が7.0%未満であれば、手術を安全におこなえる目安とされています。
数値が高いまま治療を始めると、免疫力が低い状態のため、失敗するリスクがどうしても拭えません。毎日の食事内容を見直したり、適度な運動を取り入れたりすると、数値は少しずつ改善されていきます。歯科治療をきっかけに全身の健康への意識を高めると、インプラントだけでなくご自身の体の寿命も延ばすことにつながります。
インプラント治療前に糖尿病における血糖値をコントロールする方法

インプラント治療前に糖尿病における血糖値をコントロールする方法は、以下の3つです。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
ひとつずつ解説します。
食事療法
糖尿病の一般的な治療法として、食事療法があります。血糖値安定のためには、規則正しい1日3食の食事と糖質の過剰摂取を控えることが基本です。
野菜や全粒穀物を多く取り入れ、食べる順番を工夫することも有効です。栄養士の指導を受けながら食事を考えるなど、無理なく続けられる食生活を目指しましょう。
運動療法
糖尿病の治療における運動療法は、計画的に体を動かす方法を指します。血糖値の改善に役立ち、糖尿病治療の基本的な柱のひとつです。
運動をすることでインスリンの働きを助け、血糖値を効果的にコントロールするためにおこなわれます。
薬物療法
糖尿病の治療における薬物療法とは、食事療法や運動療法だけで十分な血糖コントロールができない場合に、血糖値を改善するために薬を用いる治療法です。主に、2型糖尿病の治療で使われますが、状況に応じて1型糖尿病でもインスリン注射が必要となります。
医師の指示に基づき、インスリンや経口血糖降下薬を適切に使用することで、定期的に効果を評価することが可能です。
まとめ
インプラント治療は、糖尿病の方でも医師と共にしっかり管理されている場合は可能です。しかし、口腔内や身体の健康状態によって治療を断られる場合もあります。
インプラント治療を受けられるかどうかは、専門医と十分に相談のうえ、検討するのがおすすめです。
当院では、経験豊富な医師によってインプラント治療をおこなっております。インプラントをご検討中の方は、イオン直結のおくだデンタルクリニック港南台へお気軽にご相談ください。 港南台バーズ、ロピアにお越しの際もぜひお立ち寄りください。
この記事の監修者

本院院長 奥田 健太郎
略歴
2002年 日本歯科大学卒業
2002年 歯科医師免許取得
2003年 医療法人京和会梅田歯科 勤務
2005年 医療法人武内歯科医院 勤務
2009年 おくだデンタルクリニック開院 院長就任
2010年 九州大学大学院 博士号(歯学博士) 取得
2010年 九州大学大学院 歯学府 卒業
2011年 医療法人社団 健光会 設立
現在に至る
所属学会
アメリカインプラント学会
日本口腔インプラント学会
国際口腔インプラント学会
AAIDアメリカインプラント口腔学会
日本顎咬合学会