2024/03/13

フッ素入り歯磨き粉は虫歯予防に効果的ですが、「インプラント治療をした人はフッ素入り歯磨き粉を使えない」と耳にしたことはありませんか?実際は、インプラント治療を受けた方でも問題なくフッ素入り歯磨き粉を使えるんです。
そこでこの記事では、インプラントとフッ素入りの関係について解説していきます。
また後半には、フッ素入り歯磨き粉を選ぶ際のポイントや注意点も解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
目次
インプラントでもフッ素入り歯磨き粉は問題ない

結論からいうと、インプラント治療後にフッ素入りの歯磨き粉を使用しても問題がなく、むしろフッ素入り歯磨き粉を使ったほうが良いといわれています。
フッ素は、虫歯を予防し、口内環境を清潔に保つために効果的な成分です。特にインプラント治療後には口内ケアが非常に重要になるため、フッ素入り歯磨き粉の使用は推奨されています。
ではなぜ、「フッ素入り歯磨き粉がインプラントに悪影響を及ぼす」という話が聞かれるのでしょうか。
フッ素がインプラントに悪影響と言われている理由
フッ素がインプラントに悪影響を与えるとされることの一因は、フッ素研究会での報告に基づいています。
この報告では、「9000ppm以上の高濃度フッ素がチタンに著しい腐食を引き起こし、口内環境でその腐食が進行する」と述べられています。インプラントの主要素材はチタンであるため、「フッ素はインプラントに悪影響」という考えが広まりました。
しかし、日本の製造販売認証基準でフッ素濃度は1500ppm未満に制限されています。そのため、フッ素を9000ppmも含むような高濃度の歯磨き粉は日本で販売されていません。さらに、唾液によって濃度が薄まるため、歯磨き粉からのフッ素がチタンを腐食させるほどの濃度にないといえるでしょう。
インプラントの人にもフッ素入り歯磨き粉が推奨されている
また、日本口腔衛生学会は、インプラントや他のチタン製歯科材料を使用している患者に対しても、フッ素入りの歯磨剤を使用することを推奨しています。この推奨の背景には主に以下の2点があります。
- 歯磨き粉に含まれるフッ素は唾液によって薄められるため、インプラントの腐食リスクが低い
- フッ素は天然歯の虫歯リスクを減らす効果があるため、自然歯がまだ多く残っている場合、インプラントの腐食リスクよりも虫歯を防ぐメリットの方が大きい
インプラント治療後にフッ素入り歯磨き粉を使用するメリット
インプラント治療後にフッ素入り歯磨きを使用するメリットについて、以下の3点を深掘りしていきます。- 周囲の天然歯の虫歯を防ぐ
- インプラント周囲炎のリスクを減らす
- プラーク付着を抑える
周囲の天然歯の虫歯を防ぐ
フッ素入り歯磨き粉を使う最大のメリットは、インプラントの周りに残っている天然歯の虫歯を防げることです。
インプラント自体は人工物なので虫歯にはなりませんが、隣接する天然歯は依然として虫歯のリスクにさらされています。フッ素には「歯の再石灰化を促進する」「歯質を強化する」「酸の生成を抑える」という3つの働きがあります。これらの効果によって、残っている大切な自分の歯を虫歯から守り、長く健康な状態を保つことができます。
インプラント周囲炎のリスクを減らす
フッ素入り歯磨き粉は、間接的にインプラント周囲炎のリスクを減らす効果も期待できます。インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの歯茎や骨が歯周病菌によって炎症を起こす病気です。フッ素自体に強力な殺菌作用があるわけではありませんが、お口の中の細菌の活動を抑える働きがあります。
天然歯が虫歯や歯周病になると、お口全体の細菌バランスが悪化し、インプラントにも悪影響をおよぼす可能性があります。お口の中を清潔に保つことが、結果としてインプラントを守ることにつながります。
プラーク付着を抑える
フッ素には、歯の表面へのプラークの付着を抑える効果があります。
プラークは細菌の塊であり、虫歯や歯周病、インプラント周囲炎の直接的な原因です。フッ素コーティングされた歯の表面は、細菌が作り出すバイオフィルムが定着しにくくなります。毎日の歯磨きでフッ素を取り入れることで、プラークがつきにくい環境を作り、インプラントと天然歯の両方を清潔に保ちやすくなるでしょう。
日々のセルフケアの質を高めるためにも、フッ素は有効な成分といえます。
インプラント治療後にフッ素入り歯磨き粉を選ぶ際のポイント
インプラント治療後に使用する歯磨き粉を選ぶ際は、フッ素の有無だけでなく、その他の成分や性質にも注目する必要があります。
ここでは、日々のケアで安心して使える歯磨き粉を選ぶための5つのポイントを具体的に解説します。
- フッ素濃度が1,000〜1,450ppmのものを選ぶ
- pHが中性〜弱アルカリ性のものを選ぶ
- 低研磨タイプのものを選ぶ
- プラークを減らす殺菌成分が入っているものを選ぶ
- 低発泡・低刺激タイプを選ぶ
フッ素濃度が1,000〜1,450ppmのものを選ぶ
フッ素入り歯磨き粉を選ぶ際は、フッ素濃度が1,000〜1,450ppmの高濃度タイプを選ぶのがおすすめです。
日本の歯磨き粉のフッ素濃度の上限は1,500ppmと定められており、この範囲内であればインプラントへの腐食リスクは心配ありません。むしろ、濃度が高いほうが天然歯の再石灰化を促し、虫歯予防効果が高まります。
パッケージの成分表や説明書きをチェックし、高濃度のフッ素が配合されているか確認してください。
pHが中性〜弱アルカリ性のものを選ぶ
歯磨き粉の液性は、中性から弱アルカリ性のものを選ぶようにしてください。酸性の歯磨き粉を使用すると、お口の中が酸性に傾き、インプラントのチタン表面が腐食しやすくなったり、天然歯が溶けやすくなったりするリスクがあるからです。
一般的な市販の歯磨き粉の多くは中性付近で作られていますが、稀に酸性のものも存在します。製品の裏面表示を確認するか、歯科医院で推奨されている製品を選びましょう。
低研磨タイプのものを選ぶ
インプラントを傷つけないために、低研磨、もしくは研磨剤無配合(ジェルタイプなど)の歯磨き粉を選びましょう。
粒子の粗い研磨剤が入った歯磨き粉でゴシゴシ磨くと、インプラントの被せ物や、歯茎との境目にあるチタン部分に細かい傷がついてしまいます。その傷に汚れや細菌が入り込むと、インプラント周囲炎の原因になりかねません。
「ホワイトニング」や「強力に汚れを落とす」と謳われている製品には研磨剤が多く含まれている場合があるため、注意が必要です。
プラークを減らす殺菌成分が入っているものを選ぶ
インプラント周囲炎を予防するために、フッ素に加えて殺菌成分(IPMPやCPCなど)が配合されているものを選ぶとより効果的です。
インプラントの大敵は、歯周病菌などの細菌です。殺菌成分入りの歯磨き粉を使うことで、原因となるプラークの形成を抑え、歯茎の炎症を防ぐことができます。
低発泡・低刺激タイプを選ぶ
じっくりと丁寧に磨くために、泡立ちが少ない低発泡タイプや、刺激が少ない低刺激タイプがおすすめです。泡立ちが良すぎると、短時間で磨いた気になってしまい、汚れが残ったままブラッシングを終えてしまうことがあります。
また、ミントなどの刺激が強すぎると、長く磨いているのが辛くなってしまいます。泡が少なくマイルドな味のものであれば、鏡を見ながら時間をかけて隅々まで磨くことができ、磨き残しを減らすことにつながるでしょう。
インプラント治療後に歯磨き粉を選ぶ際の注意点
インプラントがある人がフッ素入りの歯磨き粉を選ぶ際は、以下の3点に注意してください。
- 研磨剤入りは避ける
- 顆粒入りには注意
- 外国製を使用する場合は念のため確認を
研磨剤入りは避ける
市場には、研磨剤を含むホワイトニング用の歯磨き粉が多く販売されています。研磨剤は、歯の表面のステインや汚れを削り取る成分です。これによりホワイトニング効果が得られる一方で、削り取った部分が汚れやすくなる、歯茎を傷つけるなどのデメリットも存在します。
特に、インプラントに関しては、インプラントの表面を削ることや歯茎とインプラントの間に研磨剤が入り込み炎症を引き起こす可能性があるため、推奨されません。
市販される研磨剤入り歯磨き粉には、「炭酸カルシウム」や「ケイ素」などの成分が含まれています。インプラント治療後は、これらの成分を含む歯磨き粉の使用を避けるようにしましょう。
顆粒入りには注意
顆粒入りの歯磨き粉にも注意してください。
このタイプの歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多いので、研磨剤が含まれている場合は避けるのが賢明です。顆粒がインプラントの微細な部分に入り込み、炎症を引き起こすリスクも考慮する必要があります。
外国製を使用する場合は念のため確認を
前述した通り、日本で販売されている歯磨き粉であればフッ素の量に問題はありません。
ただし、外国製の歯磨き粉では表示と違う濃度のフッ素が含まれている可能性も否定できません。気になるものがあれば、念のため購入前にフッ素量を確認し、歯科医師に相談することをおすすめします。
インプラント治療後、歯科医院でのフッ素塗布は注意

インプラント治療後にフッ素入り歯磨き粉を使用しても問題はありませんが、歯科医院でのフッ素湿布には注意が必要です。
歯科医院で使われるフッ素湿布には「リン酸酸化フッ化ナトリウム」という高濃度で酸性のフッ素が使用されており、これはチタンの腐食を引き起こす可能性があります。
自身がインプラント治療を受けた歯科医院では、歯科医師が治療履歴を把握しておりフッ素湿布が避けられるため心配ありません。ただし、インプラント治療を受けた歯科医院以外で検診などを受ける際は、インプラント治療を受けたことを必ず伝えましょう。
まとめ
インプラント治療をした人でもフッ素入りの歯磨き粉を使用して問題ありません。むしろ、口内ケアのために使用が推奨されています。
また、インプラント治療後の方が歯磨き粉を選ぶ際は、研磨剤が含まれていないものを選びましょう。不安がある場合は、歯科医師に相談してみてください。
おくだデンタルクリニックでは、インプラントのご相談を随時承っています。インプラントを検討中の方やインプラントについて不安がある方など、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

本院院長 奥田 健太郎
略歴
2002年 日本歯科大学卒業
2002年 歯科医師免許取得
2003年 医療法人京和会梅田歯科 勤務
2005年 医療法人武内歯科医院 勤務
2009年 おくだデンタルクリニック開院 院長就任
2010年 九州大学大学院 博士号(歯学博士) 取得
2010年 九州大学大学院 歯学府 卒業
2011年 医療法人社団 健光会 設立
現在に至る
所属学会
アメリカインプラント学会
日本口腔インプラント学会
国際口腔インプラント学会
AAIDアメリカインプラント口腔学会
日本顎咬合学会