2023/12/13

「インプラント治療後の歯磨きは通常の歯磨きと異なるの?どうやってやるのがいい?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
インプラント治療後の歯磨きは、インプラントの持続と健康な口腔を保つために極めて重要です。そこでこの記事では、以下の内容を中心に解説しています。
- インプラント後に歯磨きをしないとどうなるのか
- インプラント後の正しい歯磨きの仕方
- インプラント後に最適な歯ブラシ・歯磨き粉の選び方
- インプラント後の歯磨きの注意点8選
この記事を読むことで、インプラント後の歯磨きについて正しい知識を身につけ、インプラントの寿命を伸ばせるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
インプラント後は歯磨きが必須
インプラントを長持ちさせるには、毎日の歯磨きが不可欠です。インプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の歯肉や骨は細菌の影響を強く受けます。ケアを怠ると「インプラント周囲炎」という深刻なトラブルを招くリスクがあるのです。
インプラント周囲炎は、インプラント体の周囲が細菌感染して起こる炎症で、歯周病に似た性質を持ちます。初期段階では歯肉の腫れや出血が見られる程度ですが、進行すると土台となる顎の骨が溶け、インプラントがぐらつき始めます。最悪の場合、インプラントが抜け落ちて再手術が必要になるだけでなく、隣接する天然歯にまで悪影響を及もし兼ねません。
一度発症すると完治が難しい病気だからこそ、日頃の丁寧な歯磨きで予防することが重要です。高額な治療費をかけて手に入れた大切なインプラントを守るためにも、正しい清掃習慣を継続しましょう。
インプラント後の正しい歯磨きの仕方

インプラント後の正しい歯磨きは、適切なグッズ選びから磨き方・仕上げの確認まで、以下の7つの手順を守っておこなうのが大切です。
- インプラントに優しい歯磨きグッズを選ぶ
- 歯ブラシは鉛筆を持つように握る
- 磨くときは歯ブラシで全体を磨く
- 被せ物と歯肉の境目をケアする
- タフトブラシでピンポイントを磨く
- 歯間ブラシ・フロスで隙間を掃除する
順を追ってみていきましょう。
インプラントに優しい歯磨きグッズを選ぶ
インプラントのケアには、歯肉や被せ物を傷つけにくい歯磨きグッズを選ぶのが重要です。
歯ブラシは毛先が柔らかく、ヘッドが小さめのものを選ぶと、細かい部分まで届きやすくなります。硬い毛のブラシは歯肉を傷つけたり、インプラントの表面に細かいキズをつけたりする可能性があるため避けましょう。
また、歯磨き粉は研磨剤が少ないものか、研磨剤不使用のジェルタイプが適しています。研磨剤が多く含まれる歯磨き粉は被せ物の表面を削ってしまい、細菌が付着しやすくなる原因になるためです。
仕上げとして、歯間ブラシやデンタルフロスも毎日のケアに取り入れると、歯と歯の隙間の汚れをしっかりと除去できます。
歯ブラシは鉛筆を持つように握る
歯ブラシを持つ際は、鉛筆を握るように軽く持つようにしましょう。
歯ブラシを握りしめるような持ち方をすると、力が入りすぎてしまい、歯肉を傷めたりインプラントの周囲に余計な負担をかけたりしてしまいます。鉛筆持ちにすると自然と力が抜け、毛先が歯面にしなやかに当たるため、汚れを効率よく落とせます。
磨くときに力を入れたくなる方も多いですが、インプラントのケアにおいて強い力は禁物です。歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力を意識して磨きましょう。
磨くときは歯ブラシで全体を磨く
歯磨きの際は、インプラントだけでなく口の中全体をまんべんなく磨くのが基本です。インプラントが気になるあまり、その周辺だけ集中して磨いてしまうと、ほかの歯や歯肉に汚れが蓄積するためです。
磨く順番をあらかじめ決めておくと、磨き残しを防ぎやすくなります。たとえば、右上の奥歯から順番に一筆書きのように磨いていく方法が効果的です。
全体を磨き終えるまで、1回の歯磨きで2〜3分程度を目安にするとよいです。
被せ物と歯肉の境目をケアする
インプラントの被せ物と歯肉の境目は、細菌が溜まりやすく、とくに丁寧なケアが必要な部分です。この境目に汚れが残るとインプラント周囲炎の原因になります。
磨き方は、歯ブラシの毛先を境目に45度の角度で当て、軽い力で小刻みに動かすのが効果的です。力を込めすぎると歯肉を傷つけてしまうため、あくまで優しく丁寧に磨くことを意識しましょう。
鏡を見ながら確認することで、毛先がきちんと境目に当たっているかを確かめられます。
タフトブラシでピンポイントを磨く
タフトブラシとは、毛束が1つにまとまった小型の歯ブラシのことで、インプラント周囲のケアに適したグッズです。
通常の歯ブラシでは届きにくい歯と歯肉の境目や、インプラントの裏側・奥歯の側面などを集中的に磨けます。使い方は、毛先をインプラントの周囲に当てて、くるくると小さく回すように動かすのが基本です。
力を入れすぎず、歯肉を軽くマッサージするような感覚でおこなうのがポイントです。歯全体を磨いた後の仕上げとして使用すると、磨き残しをさらに減らせます。
歯間ブラシ・フロスで隙間を掃除する
歯と歯の隙間の汚れは歯ブラシだけでは取り切れないため、歯間ブラシやデンタルフロスを活用しましょう。インプラントと隣の歯の間には食べカスや歯垢が溜まりやすく、放置するとインプラント周囲炎や隣接する天然歯の虫歯・歯周病の原因になるためです。
歯間ブラシはインプラントの隙間のサイズに合ったものを選び、無理に押し込まず優しく前後に動かして使います。デンタルフロスは歯と歯の隙間に糸を入れ、歯面に沿わせてゆっくりと上下に動かすのが正しい使い方です。
毎食後のケアが理想ですが、難しければ就寝前に必ずおこなう習慣をつけましょう。
インプラント後に最適な歯ブラシ・歯磨き粉の選び方

インプラント後のケアには、インプラントや歯肉に適したグッズを選ぶのが大切です。天然歯と同じグッズをそのまま使い続けると、被せ物や周囲の歯肉を傷める原因になる場合があり注意しなければなりません。
以下では、歯ブラシと歯磨き粉それぞれの選び方を詳しく解説します。
インプラント後に最適な歯ブラシの選び方
インプラント後の歯ブラシは、歯肉やインプラント周囲に負担をかけにくいものを選ぶべく、以下の3点を意識してください。
- 毛の硬さはふつうかやわらかめ
- 毛先の形状はフラットまたは極細毛
- ヘッドはコンパクトなもの
詳しく解説します。
毛の硬さはふつうかやわらかめ
インプラント後の歯ブラシは、毛の硬さがふつうかやわらかめのものを選びましょう。かための歯ブラシは、歯肉を傷つけたり、インプラントの被せ物の表面にキズをつけたりするリスクがあるためです。
術後間もない時期はとくに歯肉が敏感になっており、やわらかめを選ぶと安心です。歯肉の状態が落ち着いてきたらふつうに切り替えても問題ありません。
自分の歯肉の状態に合わせて硬さを選ぶのが、インプラントを長持ちさせるポイントです。
毛先の形状はフラットまたは極細毛
毛先の形状は、フラットタイプまたは極細毛タイプが適しています。
フラットタイプは歯面に均一に当たりやすく、磨きムラが出にくい形状です。極細毛タイプは毛先が細く、インプラントと歯肉の境目や歯と歯の隙間など細かい部分まで毛先が届きます。
インプラント周囲の汚れをしっかり落としたい場合は、極細毛タイプがとくにおすすめです。歯科医師に相談しながら、自分の口の状態に合った毛先の形状を選ぶとよいでしょう。
ヘッドはコンパクトなもの
歯ブラシのヘッドは、コンパクトなサイズのものを選びましょう。
ヘッドが大きいと奥歯やインプラント周囲など細かい部分に毛先が届きにくく、磨き残しが増えてしまいます。一方コンパクトなヘッドであれば口の中で動かしやすく、インプラント周囲を丁寧に磨きやすくなるのです。
ヘッドの目安としては、上の前歯2本分程度の幅が使いやすいサイズです。奥歯のインプラントが気になる方は、とくにコンパクトなヘッドを意識して選びましょう。
インプラント後の歯磨き粉の選び方
インプラント後の歯磨き粉を選ぶときは、以下のポイントを押さえましょう。
- 市販の歯磨き粉で問題ない
- フッ素入り歯磨き粉を使う
- 研磨剤や顆粒入り歯磨き粉は使わない
- 迷ったら歯科医師へ相談する
市販品の中にはインプラントに向かない成分を含むものもあるため、選び方を正しく理解しておく必要があります。それぞれ解説していきます。
市販の歯磨き粉で問題ない
大前提、インプラント後の歯磨き粉は市販のものでも問題なく使用できます。インプラント専用の高価な歯磨き粉を購入しなくても、適切な成分のものを選べば十分なケアが可能です。
ただし、すべての市販品が適しているわけではありません。購入時は次に説明する成分の確認が必要です。
フッ素入り歯磨き粉を使う
インプラント治療後は、フッ素配合の歯磨き粉を選ぶのがおすすめで。フッ素には歯の再石灰化を促し、天然歯を虫歯から守る働きがあるため、お口全体の健康維持に役立つためです。
インプラント自体は人工物なので虫歯になりませんが、隣り合う天然歯には常に虫歯のリスクが伴います。また、フッ素には歯肉の炎症を抑える効果も期待できるため、インプラントを失う原因となるインプラント周囲炎の予防にもつながります。
コラム

2024/3/13
研磨剤や顆粒入り歯磨き粉は使わない
研磨剤や顆粒が多く入った歯磨き粉は、インプラント後には使わないのが原則です。
研磨剤が多い歯磨き粉はインプラントの被せ物の表面を削ってしまい、細かいキズがつくと細菌が溜まりやすくなります。顆粒入り歯磨き粉も、インプラントと歯肉の境目に粒子が挟まり、歯肉の炎症を引き起こす原因になりかねません。
歯磨き粉の成分表示を確認し、研磨剤(炭酸カルシウム・シリカなど)の配合量が少ないか無配合のものを選ぶようにしてください。
迷ったら歯科医師へ相談する
歯磨き粉の選び方で迷った場合は、担当の歯科医師へ相談しましょう。
インプラントの種類・被せ物の素材・歯肉の状態によって、適した歯磨き粉は人それぞれ異なります。歯科医院では患者さんの状態に合わせた歯磨き粉を勧めてもらえるため、自分で判断するよりも安心です。定期メンテナンスの際に「自分に合った歯磨き粉を教えてください」と一言伝えるだけで、適切なアドバイスが受けられます。
インプラント後の歯磨きの注意点8選

インプラント後に歯磨きをする際は、以下の8点に注意してください。
- インプラント手術当日はうがいや歯磨きをしない
- インプラント後の抜糸まで患部に刺激を与えない
- 飲食後と寝る前に歯を磨く
- 歯ブラシの硬さは段階的に上げる
- 毛先の細い歯ブラシを使う
- 仮歯は丁寧に磨く
- 歯磨きによる出血は放置しない
- 磨き残しに注意する
これらの注意点を知らずに普段どおりのケアをすると、治癒の妨げになったりインプラント周囲炎を引き起こしたりするリスクがあります。一つずつ解説していきます。
インプラント手術当日はうがいや歯磨きをしない
インプラント手術当日は、うがいや歯磨きをしないようにしましょう。
インプラントの手術直後は、患部に縫合した傷口があり、出血が続いている状態です。うがいや歯磨きをすると傷口が刺激を受け、血が固まりにくくなってしまいます。血の固まり(血餅)は傷口を保護し、治癒を促す大切な役割を持っているため、それを洗い流すことは回復を遅らせる原因になってしまうのです。
そのため、手術当日は安静を優先し、飲食も歯科医師の指示に従いましょう。
インプラント後の歯磨きを再開するタイミング
インプラント手術後の歯磨きは、手術の翌日から再開するのが一般的です。歯ブラシを再開する際も、手術をおこなった患部については直接ブラシを当てず、それ以外の場所を優しく磨くことから始めてください。
患部のブラッシングについては、抜糸が完了したあとに歯科医師の許可を得てから、段階的におこなうのが理想的です。しばらくは軟らかめの歯ブラシを使用し、強い力をかけないよう慎重におおこないましょう。
歯ブラシ再開のタイミングや方法に不安がある場合は、担当の歯科医師に相談し、アドバイスを受けるようにしてください。
インプラント後の抜糸まで患部に刺激を与えない
抜糸が完了するまでは、患部に刺激を与えないにしましょう。
インプラント手術後の傷口は非常にデリケートで、歯ブラシや舌・指が触れるだけでも炎症や感染のリスクが高まります。歯磨きの際は患部をできるだけ避けて磨き、うがいも強くすすぐのは控えましょう。
食事の際も、硬いものや刺激の強いものを患部側で噛まないよう意識するのが大切です。
飲食後と寝る前に歯を磨く
インプラント後は、飲食後と就寝前に歯を磨く習慣を必ずつけましょう。食後に磨かずに放置すると食べカスや糖分が口の中に残り、細菌が増殖してインプラント周囲炎のリスクが高まるためです。
とくに就寝前の歯磨きは重要で、寝ている間は唾液の分泌量が減るため口の中の細菌が増えやすい状態になります。毎食後の歯磨きが難しい場合でも、就寝前だけは丁寧に磨くことを最低限の習慣にしてください。
歯ブラシの硬さは段階的に上げる
インプラント後の歯ブラシの硬さを上げる際は、段階的に上げるのがおすすめです。術後すぐはやわらかめからスタートし、歯肉の回復具合に合わせてふつうへと移行していきましょう。
回復していないうちから硬いブラシを使うと、歯肉を傷つけてしまい治癒が遅れる可能性があります。歯肉の状態は患者さんによって回復のスピードが異なるため、自己判断で急いで硬さを上げるのは禁物です。
毛先の細い歯ブラシを使う
インプラント後のケアには、毛先の細い歯ブラシを活用するのが非常に効果的です。
インプラントと歯肉の境目はとくに細菌が溜まりやすい場所ですが、一般的な歯ブラシでは毛先が奥まで届かないことがあります。その点、毛先が細いタイプであれば、インプラント周囲の狭い溝や境目にもしっかり入り込み、磨き残しがちな汚れを効率よく除去できます。
自分に合った毛先の細い歯ブラシは歯科医院でも紹介してもらえるため、一度担当の歯科医師や歯科衛生士に相談してみるのがおすすめです。
仮歯は丁寧に磨く
インプラントの仮歯は、最終的な被せ物に比べて素材の強度が低いため、より一層丁寧に磨く必要があります。
仮歯は一般的にプラスチック製が多く、強い力で磨いたり研磨剤入りの歯磨き粉を使ったりすると、表面に傷がついたり破損したりするリスクがあります。仮歯の周囲も細菌が繁殖しやすいため、やわらかい歯ブラシを用いて、軽い力で優しく磨くのがポイントです。
もし仮歯が外れたり欠けたりした場合は、放置せず速やかに歯科医院へ連絡してください。仮歯の期間にどれだけ清潔な状態を保てるかが、最終的なインプラントの仕上がりや健康状態にも大きく影響します。
歯磨きによる出血は放置しない
歯磨き中に出血があった場合は、放置せずに歯科医師へ相談してください。
インプラント後の初期段階では多少の出血が起こることもありますが、歯肉が落ち着いた後も出血が続く場合はインプラント周囲炎のサインである可能性があります。歯磨きの際に毎回少し血が出るという状態を当たり前と思わずに、早めに受診して原因を確かめましょう。
磨き残しに注意する
インプラント後のケアでは、磨き残しをなくす意識がとくに重要です。インプラントは構造上、通常の歯ブラシだけでは汚れが残りやすいため、タフトブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを組み合わせて活用しましょう。
自分では届かない箇所の汚れを徹底的に除去することが、インプラント周囲炎などのトラブルを防ぐ鍵となります。また、定期的に歯科医院でプロによるクリーニングを受けることも、磨き残しをリセットし、健康な状態を長く保つために非常に有効です。
まとめ
インプラント治療後の適切な歯磨きは、治療の効果を長持ちさせ、さらなるトラブルを防ぐために不可欠です。歯磨きをする際の注意点や歯磨き粉の選び方など、インプラントに適したケア方法を取り入れることで、インプラントの寿命を伸ばすことができます。
今回ご紹介した内容を実践し、インプラント後の口内を清潔に保ちましょう。
おくだデンタルクリニックでは、インプラントのご相談を随時承っています。インプラントを検討中の方やインプラントについて不安がある方など、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

本院院長 奥田 健太郎
略歴
2002年 日本歯科大学卒業
2002年 歯科医師免許取得
2003年 医療法人京和会梅田歯科 勤務
2005年 医療法人武内歯科医院 勤務
2009年 おくだデンタルクリニック開院 院長就任
2010年 九州大学大学院 博士号(歯学博士) 取得
2010年 九州大学大学院 歯学府 卒業
2011年 医療法人社団 健光会 設立
現在に至る
所属学会
アメリカインプラント学会
日本口腔インプラント学会
国際口腔インプラント学会
AAIDアメリカインプラント口腔学会
日本顎咬合学会